世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい
石井智恵美
教区の2・11「信教の自由を守る日」集会の講演会「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」と題する森達也さんのお話を聞いてきました。TVディレクターだった森さんは、1995年阪神淡路の大震災の年、オウム真理教地下鉄サリン事件が起こり、報道がオウム一色になってしまった異常さを体験したといいます。同調圧力が強いと言われる日本社会ですが、不安と恐怖を燃料にして集団化する社会の危険性を森さんは指摘していました。最新作の映画『福田村事件』でも、関東大震災の際に四国から行商に来ていた一行を朝鮮人と誤認して虐殺してしまった事件を描いて、集団の暴走の恐ろしさを警告していました。
重いテーマの話が続きましたが、最後に希望を感じさせる話を森監督は、紹介してくれました。それは、刑罰を軽量化している北欧諸国、特にノルウェーの実践です。ニルス・クリステイという教育学者の主張は”犯罪は三つの不足から生まれる。①幼年期の愛情不足 ②思春期の教育の不足 ③成人期の貧困(豊かさの不足)だから、それを補ってやればよい”という考え方です。死刑や終身刑はなく、禁固21年が最も重い刑です。刑務所も監獄というよりも明るい教育施設という雰囲気です。このように刑罰の軽量化、社会更生の方向へ舵を切った結果、犯罪が減り、再犯率がほぼゼロになったと言うのです。ノルウェーの成功例を見て、他の北欧諸国にも広がっていったとのことです。人を信頼する大切さに希望を与えられました。